ねぇ、知ってた? 30歳を過ぎて、まさか自分のお腹の脂肪より、猫の毛玉の吐き戻しの回数を真剣にカウントする日々が来るとは思ってもみなかったんだから。
私の名前はサクラ、三十路の坂を軽やかに転がり落ちつつあるフリーランスのライター。

仕事はそれなりに楽しいけれど、まぁ、正直に言うと「このままでいいのかな?」って漠然とした不安が常に心の片隅に住みついている。
結婚? まぁ、ご縁があればくらいで、別に焦ってもいないし、かといって「一人最高!」って吹っ切れてるわけでもない。
そんな煮え切らない私の人生に、まるで彗星のごとく、いや、むしろ段ボール箱に入った天使のごとく現れたのが、うちのレオだ。
生後数ヶ月の小さな、それはそれは可愛らしいキジトラの子猫。保護猫譲渡会で目が合った瞬間、「あ、この子だ」って電流が走った。
猫を飼うのは初めてだったけど、動物好きの血が騒いだというか、気づいたら手続きを済ませていた。
レオとの生活は、想像以上に賑やかで、そして温かかった。朝起こしてくれるのは、目覚まし時計じゃなくて顔に乗っかってくるレオの体重。
コーヒーを淹れる音を聞きつけてキッチンに現れ、スリスリと足元を回るレオの柔らかな感触。
パソコンに向かっていると、キーボードの上を堂々と横断する毛玉の塊。すべてが新鮮で、愛おしかった。
レオはすくすく育って、あっという間に子猫期を卒業し、スマートでやんちゃな若猫になった。ご飯もしっかり食べるし、遊びも大好き。
高いところに飛び乗ったり、おもちゃを追いかけ回したり、それはもう元気いっぱいだ。
初めての冬が来る前、ふと猫に関する情報サイトを見ていたとき、獣医さんでの定期的な健康診断の重要性についての記事が目に留まった。
「年に一度は健康チェックを」「病気の早期発見につながる」…うんうん、そうだよね。人間だって健康診断、大事だもんね。レオも家族なんだから、当然だ。
そう思って、最寄りの動物病院を検索した。家の近所に、新しくて清潔そうな動物病院を見つけた。

「ふくふくアニマルクリニック」。名前からして、なんだかほっこりする。
ウェブサイトを見ると、先生の顔写真があった。優しそうな、でも頼りになりそうな女性の先生だ。よし、ここにしよう!
初めての動物病院予約の電話は、なぜか面接の電話より緊張した。
「あの、猫の健康診断で…初めてなんですが…」とモゴモゴ話す私に、受付の方が丁寧に「猫さんの年齢は?」「過去に病気や怪我はありますか?」と聞いてくれる。レオはまだ1歳未満だし、特に大きな病気も怪我もない。
それを伝えると、「では、初回の健康診断として、簡単な診察と体重測定、必要であれば寄生虫の検査などを行いますね。予防接種はお済みですか?」とのこと。
予防接種は済ませてあることを伝えて、予約完了。ああ、なんだか大人になった気分だ。レオの健康を管理する、飼い主としての第一歩を踏み出したぞ!
予約した日は、レオをキャリーケースに入れるところから一苦労だった。
普段は遊び場なのに、病院に行く気配を察するのか、キャリーケースを見ると途端に姿をくらます。
「レオ〜、おやつだよ〜」「美味しいものあげるから〜」とあの手この手で誘い出すも、警戒心むき出し。
最終的には、部屋の隅で小さくなっているレオを、心を鬼にして捕獲し、キャリーケースにIN。ギャーギャー鳴くレオに「ごめんね、ごめんね、すぐ終わるから!」と声をかけながら、病院に向かった。
病院の待合室は、私にとって未知の世界だった。
ワンワン吠える犬、キュンキュン鳴く子犬、そして、うちのレオのように小さくなって震えている猫たち。
それぞれに飼い主さんが寄り添っていて、その光景を見ていると、みんな同じように家族を想っているんだな、としんみりした。
同時に、レオがさらに不安になっていないか心配で、キャリーケースに顔を近づけては「大丈夫だよ、ママがついてるよ」と耳元で囁いた。
レオは「ニャー…」と力なく鳴いて、さらに私の胸を締め付ける。
しばらく待って、名前が呼ばれた。「サクラさん、レオちゃん、どうぞ」。
いよいよだ。診察室に入ると、ウェブサイトで見た通り、優しそうな女性の先生が笑顔で迎えてくれた。
「こんにちは、レオちゃん。初めまして」と、先生はレオの入ったキャリーケースに優しく声をかけた。その声色だけで、なんだか安心できた。

レオをキャリーケースから出すと、緊張しているのか、先生に抱っこされても微動だにしない。
先生はゆっくりとレオの体を触りながら、「さて、レオちゃん、どこか気になることはありますか?」と私に尋ねた。
ここからが、私の心配症の本領発揮だ。
「あの! 実は最近、ご飯を食べる量がほんの少し、ほんの少しだけ少ないような気がするんです! あと、たまに、こう…ケホッ、ってするんです。これって風邪ですか!? それとも毛玉? それとも、何か他に病気が隠れてるんじゃ…!?」
ネットで「猫 咳」「猫 食欲不振」と検索しまくった結果、私の頭の中は様々な病名の羅列でいっぱいになっていた。
「FIPだったらどうしよう」「腎臓病の初期症状かも」「まさか腫瘍とか…」考え始めると止まらない。レオがケホッとする度に心臓が鷲掴みにされるようだった。
先生は、私のマシンガントークをうんうんと頷きながら、じっと聞いてくれた。
そして、私の不安をすべて受け止めてくれた上で、一つ一つ丁寧に説明してくれた。
「サクラさん、心配になりますよね。特に初めて猫さんを飼う方は、どんな小さな変化でも気になりますし、ネットの情報は玉石混交ですから、余計に不安になることも多いでしょう」
そう言って、先生はレオの歯茎の色、目の輝き、被毛の状態、触診で体のしこりがないかなどを確認した。そして、レオの口の中をそっと覗き込んだ後、こう言った。
「まず、食欲についてですが、ほんの少しの量の変化は、その日の活動量や気温、あるいは単に気分ということもあります。毎日劇的に減っているわけではないようですし、体格も良いので、現時点では過度に心配する必要はないでしょう。もし、二日以上全く食べない、嘔吐や下痢を伴う、元気が全くない、といった症状が出た場合はすぐに連れてきてくださいね」
ホッ…まず一つ目の不安が解消された。
次に、私の最も心配していた「ケホッ」について。
「そして、この『ケホッ』ですが…」と先生は言いながら、レオの喉元を優しく撫でた。
「これは、おそらく毛玉を出すための仕草ですね。猫さんは毛繕いでたくさんの毛を飲み込みますから、定期的に毛玉を吐き出すのは生理的なことなんです。特にこの時期は換毛期でもありますし、少し頻度が増えることもあるでしょう」
先生は、毛玉ケア用のフードやペーストのサンプルをいくつか出して、「こういうものを使うと、毛玉が便と一緒に排泄されやすくなるので、吐き戻しの回数を減らせますよ。
もし、吐き戻しに加えて、食欲不振が続いたり、お腹が張っていたり、苦しそうに咳き込むようなら、それは別の原因も考えられますので、また来てください」と教えてくれた。
なるほど、毛玉だったのか! 私の頭の中で大きくなっていた病気の可能性が、小さな毛玉に姿を変えた。
先生の穏やかな声と、分かりやすい説明を聞いているうちに、心の中の霧が晴れていくようだった。
先生は最後に、健康診断の重要性について改めて話してくれた。
「レオちゃんはまだ若いので、今のところ大きな問題は見つかりませんでした。素晴らしいことです。でも、猫さんは体の不調を隠すのがとても上手な生き物です。私たちが気づいたときには、病気がかなり進行している、ということも少なくありません。だからこそ、病気の兆候がなくても、定期的に病院に来て、体のチェックを受けることが大切なんです」
「サクラさんがレオちゃんの小さな変化に気づいてあげられたのは、本当に愛情を持って見守っているからこそです。その気づきが、将来のレオちゃんの健康を守る第一歩になります。心配しすぎることはありませんが、何かいつもと違うな、と感じたら、気軽に相談してください。私たち獣医は、サクラさんと一緒に、レオちゃんの健康を守っていくチームですから」
チーム…! その言葉が、私の心に深く響いた。
一人で抱え込んで、ネットの情報に振り回されて、勝手に不安になっていた私にとって、それは何よりも心強い言葉だった。
獣医さんは、ただ病気を治すだけじゃなくて、飼い主の不安に寄り添い、正しい知識を与え、一緒に猫の未来を作ってくれる存在なんだ。
診察室を出る頃には、私の顔から不安の色は消え、なんだか清々しい気持ちになっていた。
キャリーケースの中で静かになったレオに、「レオ、大丈夫だったよ。先生、優しかったね」と話しかけると、レオは「ニャーン」と小さく返事をした。その声が、いつもの甘える声に戻っていた気がした。
家に帰って、キャリーケースから出たレオは、すぐに部屋の中を探検し始めた。
病院での緊張なんて嘘みたいに、いつものレオに戻っている。その姿を見ていると、なんだか胸がいっぱいになった。

レオの健康診断を通して、私はたくさんのことを学んだ。
心配しすぎるのは良くないけれど、日々の観察はとても大切だということ。ネットの情報に惑わされず、専門家である獣医さんの意見を聞くことの重要性。そして何より、獣医さんは私の「チームメイト」として、一緒にレオの健康な未来を考えてくれる存在だということ。
レオが私の人生に来てくれて、私は初めて「守るべき存在」を持ったのかもしれない。
彼の小さな命、そのキラキラした瞳、柔らかい毛並み…そのすべてを、健康で、幸せに保ってあげたい。そのためなら、ちょっとくらいのドキドキや心配なんて、へっちゃらだ。
今日、獣医さんでもらったアドバイスを実践してみよう。
毛玉ケアのフード、試してみようかな。あと、先生が言ってた遊び方、あれも取り入れてみよう。レオともっと、もっと、楽しい時間を過ごしたい。
レオが私の膝の上に乗ってきて、ゴロゴロと喉を鳴らし始めた。その振動が、私の心にも伝わってきて、温かいものが広がっていく。
この温かさ、この小さな命との繋がりこそが、私の人生をこんなにも豊かにしてくれたんだ。
心配性な私のドキドキも、獣医さんのやさしい魔法にかかれば、レオとの未来を照らす希望になる。
そう信じて、私はレオと共に、明日からも元気に過ごしていこうと思う。
ねぇ、レオ。これからも一緒に、たくさんの「初めて」を経験していこうね。そして、いつまでも元気でいてね。
fin.
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